わが家の裏手にはちいさな畑があって、天気のよい日になると、おばあちゃんが畑仕事にやってくる。みるからに達者な、おしゃべり好きのおばあちゃんで、窓をあけているとよく話し声がきこえてくる。とおりすがりのご近所さんや郵便屋さんをつかまえては、おしゃべりをはじめるのだが、いつもおばあちゃんしかしゃべっていない。だれもつかまらないと畑の野菜に話しかけている。おばあちゃんともなると、人も野菜もそれほど変わらないらしい。

ある日、おばあちゃんは網戸のむこうの猫たちに話しかけていた。どうやら、妹のことがお気に入りのようだ。妹もおばあちゃんのことが気になるらしい。気のあうふたりは種族の壁を越え、ガールズトークに花をさかせる。「おや三毛ちゃん、こんにちは!」「むる!」「おまえさんは今日も丸いねえ」「むるる!」「朝ごはんはすませたのかね?」「むるあ!」。そんなやりとりがしばらくつづく。おばあちゃんとこれほどおしゃべりをするのは、妹ぐらいではなかろうか。私はそんなふたりの会話を聞くのが好きで、おばあちゃんの畑仕事がはじまると、こっそり窓をあけておくのだ。