おなじおばさん

ご近所に、おなじおばさんがいる。よく似た背丈に、ぽっちゃりとした形。まあるい顔に、くりっとした目玉。髪型はもちろん、白髪のつきかたまでそっくり。ひとりは、ななめうしろにすんでいる回覧板をまわしにいく家のおばさん。もうひとりは、ななめむかいの細長い家にすんでいる町内会の班長。イニシャルトークをしようとおもったが、考えてもみれば、どちらもTさんだ。これはこまった。

このあたりに越してまもないころ、たったいまむかいの軒先で庭の手入れをしていたとおもったら、かいもの袋をさげてうしろからあらわれたり、曲がり角ですれちがったばかりなのに、また目の前からあらわれたりと、デジャブにも似たふしぎなおばさん体験をよくさせられたものだ。このあたりは井戸端会議がさかんで、日の出とともにどこからともなくおばさんたちが湧いて出ては、あちらこちらでガールズトークに花を咲かせる。そのなかには、あのふしぎなおばさんの姿もあった。ふたりだと判明したのもしばらくしてからのことで、はじめは何人いるのかさえわからなかった。はたしてニンゲンなのかさえも。おばさんの姿かたちをした妖精なんじゃないか、はたまた幽霊でもみているんじゃないか… そんなことがわが家でまことしやかにささやかれだした、ある日のこと。

息子をつれていると、突然、おばさんのひとりから声をかけられた。まずい!魔法かなにかをされて、私もおなじおばさんにされてしまうのでは…!などと心のなかですこしおもったが、話してみれば案外、ふつうのおばさんだ。どうやら生身のニンゲンのようでほっとした。それからまもなくして、もうひとりのおばさんとも、ささやかな交流をもつようになった。それからというもの、おなじおばさんたちは「いつでも息子さんのめんどうみちゃうんだから遠慮なくいうんだよ」と、なにかと気にかけてくださる。似ているのは、姿かたちだけではないらしい。