彼女は習慣をおもんじる。こうときめたら、とことんおなじことをくりかえすのが、彼女のくらしの流儀だ。

何年かまえの、ある日の夏のこと。キッチンのひんやりとしたステレンスのところにへばりついている彼女をみて、悪戯心で霧吹きをかけてみた。はじめは、ふゅっ!と声をあげておどろいていたが、なんどかくりかえしているうちに、むるむると喉をならすようになった。さらりとしたミストが涼感を誘うのか、きもちよいらしい。そのうちノズルをむけるとからだを寄せてくるようになり、いまでは霧吹きを手に取るだけでやってくるようになった。

霧吹きをしてびしょびしょにしたあとは、手ぐしをいれる。あたまからしっぽの先まで、からだをしぼるように撫で、被毛の表面に浮いた抜け毛をあつめとるのだが、これがマッサージ効果があるのか、きもちよいらしい。そのうち洗いものをしているだけで、濡れ手をめあてにキッチンにやってくるようになり、いまでは手を洗おうと蛇口をひねると、いつのまにかそばにいる。彼女は習慣をおもんじるだけでなく、こうみえてけっこうせっかちなのだ。

この行事は「お芋のうちみず」と呼ばれ、わが家の夏の風物詩として親しまれている。