左が私ので、右が息子の。いくつになっても、どこへいっても、手放すことなく本棚のいちばんいいところにしまってある。愛着というよりも、執着。私にとって、この絵本は魔よけのようなもの。

こどもの頃、この絵本のことが怖くて怖くてたまらなかった。本にさわるのも覚悟がいった。けれど、気になってしようがない。毎晩のように、本のすみっこを指でつまんで、母のところにもっていって読んでもらっていた。あいにく、私のいたところには森がたくさんあって、この絵本に描かれた景色とよく似た場所をいくつも知っていたおかげで、ただならぬ臨場感があった。

まわりの大人たちからは、「もりのおばけが来るよ!」と、この本をだしにずいぶん言うことをきかされたし、いまも「おばけ」と聞くと、この本のことをおもいだす。森のなかへ行けば、心のなかでつい「おーい」とつぶやいてしまう。このさき、私にもりのおばけの呪いから解き放たれる日はやってくるのだろうか…… こないな、きっと。

息子にも、ぜひこの呪いをかけてみたいとおもって、ずいぶんはやいうちから読みきかせた。言葉はわからなくても、絵のきみわるさで、はじめのうちは手にとるだけで逃げ隠れしていたが、その様子がおもしろくてしつこくしていたら、すっかり慣れられてしまった。くやしい。

それからというもの、息子にかけるなにかよい呪いはないかと、本屋の絵本棚をながめるのがたのしくてしようがない。