家のことをしていると、ちょっとしたすきをつかれ、彼に外へ出られてしまうことがある。こないだの連載でも書いたが、室内飼いの猫が外へ逃げだしてしまったときに忘れてはならない鉄則、"彼らは遠くへはいかない"。

とはいえ、家のなかにしかいないはずの猫が、窓の外にいるときのありえなさというか、非日常感というか、あのちょっとしたSF体験には、いつも肝を冷やす。

まったく、めんどうかけやがって ――― そんなふうに、手荒くとっつかまえられた彼は、家のなかにつれもどされると、いかにも反省しているかのようにちょこんと香箱をして、ちらちらこちらを見たり、目をそらしたりする。しかし、主にはわかるのだ。

そんな瞳の奥にみなぎらせる充実感を。そこはかとない優越感を。あれは反省している顔ではない。ひとしごと成し遂げたあとの感じのサクセス顔だ。