混沌たるこの部屋(うちゅう)のかたすみで、こうするやつと彼女は、まるで原子のむすびつきのように、互いのよすがに、ただひとつだけの秩序であり得た。そう、ただひとつだけ。こうするやつは、忘れなかった。彼女のおもたさが、さざ波になって時空をかけぬける。こうするやつは、使途も名前もなくしたまま、すべてをおもいだしたかのように、忘却の深潭からいっきに浮上した。