三歳のエミネム – guremike


三歳のエミネム

テレビを置いていない。代わりに、音楽が流れている。息子と音楽の接点といえば、それと僕のギターぐらいしかない。三歳らしからぬ彼のユニークな音楽選好は、アップルミュージックのプレイリストの再生回数と、リトルマーチンの弦の錆ぐあいと相関があり、ザイオンスの法則が、これを証明している。

選りに選って、家のなかを走らないからとか、食事のときにふざけないからとか、自ら条件を提示してまで聞きたがるのが、エミネムだったというのは興味深い。

事の始まりはミュージックビデオだった。いったい何がこれほど興味を惹きつけるのか、息子に問うと「黒い人」のことが気になってしょうがないらしい。特に、彼らがエミネムたちの猿真似をするシーンが好きらしい。不思議で不気味な世界観に、絵本のような趣きを感じているのかもしれない。

何百回、聞かされたことか。いい加減、飽きたし、エミネムの真似とやらの意味不明なラップも小煩くてしょうがない。一時はエミネム禁止令が発令されたこともあるが、息子が切ってくる取引のカードは、そう悪いものでもなく、結局、いまも毎日のように聞かされている。

条件をきちんと履行できた日は、ビデオの視聴権も獲得できるので、自ら進んで歯磨きをしたり、片付けをしたり、苦手なパプリカだって食べようとする。幾ら飽きても、少々小煩くても、こちらも手放すには勿体無いカードである。

あの「黒い人」の正体が、自分だったと息子が気づくのは、いつのことだろうか。それよりも、もっと興味深いのは、息子は主演のふたりを「帽子をかぶっているほうとそうでないほう」で見分けていることだ。

三歳児は、肌の色など見ていない。