猫とんかつ

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息子に「なにか食べたいものは?」と聞くと、猫をまっすぐ見て「猫とんかつ」と答えたことがある。その場に走ったほのかな戦慄と、まんまるの目でこちらを見る猫の顔が、忘れられない。

豚や牛は食べるのに、どうして猫は食べないのかなんて、三歳の息子にはわからない。世界には、食文化として猫を食べる慣習をもつ人たちもいる。ここで、「猫はたべものじゃないんだから!」と話を終わらせるか、「食べたらどういう味がするかな?」と話を広げてみるか、親の器量が試されるというもの。

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猫食文化の存在や、幼児のなにげない一言が証明するように、猫は食べものだということを、私たちは本能的に知っている。可愛すぎて食べたい。そんな矛盾した衝動に駆られることさえ。心で食べるか、胃袋で食べるかのちがいだ。私たちの脳内では、"可愛い"と"美味しい"は、どこかで線が繋がっているのかもしれない。

私たちだけでなく、猫たちもおなじだ。急死した飼い主を、猫たちが食べてしまったという話もあるそうだから、おたがいさまだ。猫に食べてもらえるなんて、それはそれで、愛猫家冥利につきるというもの。猫に食い散らかされた、ぼろぼろの死体を発見する人には、もうしわけないが。鳥葬ならぬ、猫葬とは、けっこうロマンチックじゃない?

まあ、ニンゲンなんて臭くて、そう食べられたものではないかもしれないが。愛猫家たるもの、おたがいに非常食という意識を忘れず、もし急死しても、文字どおり"猫にまたいで通られ"ないよう、むしろ、食べてもらえるぐらいの信頼関係は築きたいものだ。

(※挿絵は、ぼうさんからのいただきものです。)