guremike*

猫たちを花に喩えたら

兄の生前、わが家では、よく"猫たちを○○にたとえたら"という話をしました。有名人にたとえたら。会社員にたとえたら。アニメやゲームのキャラクター。さらには、お菓子やスイーツまで。こんかいは、"花にたとえたら"というお話です。

わが家のナルキッソス

兄は、スイセンがぴったり。花言葉は、"自己愛"。英語名は、ナルキサス。

そのむかし、ナルキッソスという色男がいたそうな。若くて美しく、だれからも求められるナルキッソスは、女の子をつかまえては、ひどいことばかりしていたので、神様が自分しか愛せなくなる罰を与えると、水面に映った自分の姿から目を離せなくなり、痩せ細って死んでしまいます。その跡に、スイセンの花が咲いたのだそうな。

愚かな男とはいえ、美しい男ならではのエピソード。わが家のスイセンも、「やれやれ、バカなやつだな」と猫の狭い額に手をあてながらも、心のなかでは「(僕も気をつけなくちゃ!)」と、その手を胸におろし、そのまま十字を切っていたことでしょう。奇しくも、兄が痩せ細って死んだあとにも、時折、花が咲きます。

彼女の花をさがして

さて、妹。まっさきにおもいつくのは、タンポポやヒマワリのような、親しみのある花。私のなかで、三毛猫はなんとなく黄色のイメージ。じっさいに、グルーミングのしすぎで体じゅうよだれ焼けして、うっすら黄ばんでいるし。それに、血まなこで虫を追いまわしたり、出会い頭に兄に殴りかかったり、窓越しに庭先の猫に飛びかかったりと、意外と武闘派な彼女には、道端に咲く野性的な花がぴったり。

でも、さがしているのは、三毛猫にぴったりの花ではなく、妹の花。見た目やイメージだけではなく、兄とスイセンのように、もっと妹らしいエピソードが欲しいところ。そこで、インターネッツの大海原へとびこみ、想像の帆をはためかせ、ニシヘヒガシヘとマウスを走らせること、数時間。地中海はコルシカ島のバラーニュ地方に咲くという、ある一輪の花にたどりつきました。

ワインと醤油

地中海に浮かぶ島。あゝ、なんてエキゾチックな響き。そのうえ、なんとかーニュ地方だなんて、いまにも葡萄畑のおしゃれ臭が、そよ風にのって丘陵を駆け下りてきそう。ワイン香り立つ地に生息しているその花も、まさか、地球のうらがわの醤油香り立つ地に生息している小太りの三毛猫に喩えられようとは、朝の露ほどもおもわないことでしょう。

妹のイメージにぴったりの黄色い花。まるこくてころころしたシルエット。タンポポのように可愛らしくも、自生種ならではの力強さを感じさせる野性味。枯れてもなお、色や形をとどめることから、"永遠"の花言葉をもつその花の名は、イモーテル

奇しくも、わが家にも枯れてもなお、体型をとどめつづけ、野性的で、うすら黄ばんだ、永遠の芋の花が咲いています。ワインと醤油をつなぐ奇妙な一致に、私の愛も発酵がとまらないというものです。少々、みごとに話が落ちすぎたせいか、嘘の香りが立ちはじめるまえに、筆をおくとしましょう。

みなさまも、愛猫にぴったりの花をさがしてみてはいかがでしょうか。

猫たちを花に喩えたら

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