キャッチボール

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ナイスキャッツ!ゴムボールの予測不可能な動きも、まるで軌道を読むように目で追いかける。体が追いつくかどうかは、さておき。

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ボールを投げると、弾丸のようにすっ飛んでいく兄とちがって、妹は照準を狙い澄まして、最小限の動きで仕留めようとする。猫じゃらしを振っても、そう。"のれんに腕押し、お芋にじゃらし"ということわざがあるぐらいだから。ないけど。遊びにおいても、徹底して体力温存に務めるあたり、誠におそれいる。

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狩りをやらせたら、たぶん妹のほうがうわて。家のなかでも、よく虫を捕まえている。外でも、この怠惰な体を維持できるのではないかとおもうほど、獲物には困らなそう。もっとも、外でこんな体をしていたら、逆に獲物になりそうだが。

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ちなみに、猫は動画がソーマトロープのように見えるほど、時間分解能が高いそうだ。ニンゲンごときが、いくら猫じゃらしを振りまわしても、彼らには、そよ風になびく狗尾草のようなものなのかもしれない。

闘病ノートより

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六月。嘔吐が続く。もともと、よく吐く猫だった。入院して精密検査へ。嘔吐の原因は不明、腸に毛玉が溜まっている様子もない。胃腸薬が処方され、嘔吐は治まる。心雑音があるが、カラードップラーを見ても心筋症というわけではなく、弁の逆流も診られない。大動脈への流速が速い。緊張のせいかもしれない。経過観察に入る。

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腎結石が見つかる。以前のストルバイト結石ではなく、高齢猫に多いシュウ酸カルシウム結石。食事療法では溶かせない。膀胱や尿路まで下りて来ないと、外科的に取り出すことは困難。幸いにもまだ小さく、詰まって腎臓内を傷つけるような兆候はない。加齢もあり、腎機能の数値が悪化している。処方食に切り替えて結石の悪化を防ぐ。

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十一月。激しいふらつきと眼振。白血球の数値が上昇、貧血状態に。ふらつきの原因の特定は困難。もともとの少食に加え、処方食の不味さがさらに食を細らせ、半年で体重を三割も減らしていた。育児に気を取られ、想像以上に食べていないことに気づけなかった。

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腎不全の診断が下る。体重を増やすことを急ぐ。処方食をやめ、抗生剤を服用。食欲はない。好物のウェットフードも食べない。眼振はおさまったが、ふらつきを繰り返す。原因は貧血か、尿毒素による脳の炎症か。

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十二月。容態が悪化。脱水が酷い。入院して二十四時間体制の点滴状態に入る。腎結石が尿の流れを妨げ、左腎臓の濾過機能が失われる。右腎臓も結石の影響で詰まり気味になり、尿毒素の数値が上昇、腎不全は末期の状態に。

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腎結石が尿管に詰まっている様子はないが、尿管の手術は体への負担が大きい。特殊な手術で、家から遠く離れた病院に何週間も入院させなければならない。たとえ手術に成功しても、回復が見込めるかどうかはわからない。それ以前に、いまの体力では麻酔にも耐えられない可能性が高い。現実的ではない。いずれにせよ、まずは体力の回復を試みる。

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毎日、面会へ。心臓への負担から、点滴の流量を増やすことができず、脱水症状の改善が遅れる。医師いわく「この数値では、死亡してしまう子もいる。顔つきもしっかりしているし、歩くし、トイレにも行く。我慢強い猫だ。」とのこと。

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入院から三日目。脱水症状が改善、退院。ネフガード、ブスコバンが処方。翌日からは、皮下輸液と経過観察に。血液検査の結果が、日に日に悪くなる。輸液の分、小便は出るが、さらに食事を受け付けなくなる。さまざまなウェットフードを試す。お湯で伸ばして出すと、初めてのものには少し口をつけるが、その後は食べない。

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死を覚悟する。兄に残された時間とOQLを考え、医師との相談の末、通院をやめる。苦痛を和らげられるよう、輸液の皮下注射は引き続き、自宅で行う。あれほど入るのを嫌がっていたキャリーケースに、自ら引きこもる。トイレに間に合わず、なかで小便をしてしまうことも増える。それでもあきらめず、トイレに向おうとする。なんど倒れても、立ち上がる。階段から転げ落ちても、あきらめない。寝たきりになっても、トイレにだけは立ち上がる。執念というか、猫の矜持のようなものを感じる。

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十二月十五日、正午。入退院の繰り返しで病院の匂いが染み付いた兄を、威嚇して遠ざけていた妹が、そばにやってくる。少し大きな声で二回鳴く。心停止。

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